歌舞伎座「 六月大歌舞伎 」
先週と 今週 続けて 昼の部、夜の部を観劇してきました。 演目は、天保遊侠禄(てんぽうゆうきょうろく)、新薄雪物語( しんうすゆきものがたり )、夕顔棚( ゆうがおだな )の3つでしたが、今迄 観たことがありません。
■天保遊侠禄(てんぽうゆうきょうろく)
幕末前夜の江戸の世相を描いた作品です。 江戸の天保年間。旗本の勝小吉( 橋之助 )は、若い頃からの放蕩生活のため、今も無役の身です。 今日は秀才と評判の高い息子の麟太郎のため、御役につこうと向島の料理茶屋で上役の大久保上野介を招いての宴席の準備をしています。 そこへ芸者の八重次( 芝雀 )が現れますが、座敷に出るのを嫌がります。 実は以前、小吉と八重次は深い仲でしたが、駆け落ちの末、捨てられた八重次は恨みを持っていたのです 。息子のためにと懇願され、八重次は大久保をはじめ横柄な役人たちをもてなします。
■新薄雪物語( 昼の部 : 花見、詮議 )
【花見 あらすじ 】 京の春、花の名所清水寺の境内。 六波羅探題の命によって、園部兵衛の一子「 左衛門( 錦之助 )」は、刀鍛冶「 来国行( 家橘 )」に打たせた刀を清水寺へ奉納に来る。 幸崎伊賀守の息女薄雪姫( 梅枝 )も腰元「 雛( 時 蔵 )を連れて清水へ参詣。 左衛門の「 奴妻平( 菊五郎 )は、雛と恋仲。 二人の取り持ちで、薄雪姫と左衛門は互いに胸の想いを打ちあける。 二人の艶書は、「 秋月大膳( 仁左衛門 )」の家来「 渋川藤馬( 松之助 )」の手に入る。 大膳は六波羅の天下をねらう陰謀家で、薄雪姫に横恋慕、藤馬もまた雛に横恋慕している。 一方「 来国行( 家橘 )」は偶然清水寺で、女のために勘当した息子「 来国俊( 橋之助 )」に会う。 国行と奉納の刀影の太刀をつくる役目で争って破れた「 団九郎( 吉右衛門 )」は、太刀に「 国家調伏 」の「 やすり目 」を入れたところを、国行に発見される。 あわや悪事路程というところを来かかった大膳が国行を殺し、団九郎を救う。 調伏の「 やすり目 」を入れさせたのは大膳で、六波羅の重臣園部兵衛、幸崎伊賀守を謀叛の罪に落とす陰謀であった。
【 詮議 あらすじ 】 「 天下調伏 」は今で言う国家に対すべする叛逆罪であるから、逃れる術はない。 奉納の太刀に調伏の「 やすり目 」が発見されたから「 幸崎館 」へ、執権「 葛城民部( 菊五郎 )」は「 秋月大学( 彦三郎 )」、「 幸崎伊賀守( 幸四郎 )」、「 園部兵衛( 仁左衛門 )」が集まって詮議が始まる。 そこで「 薄雪姫( 児太郎 )」と左衛門に嫌疑が掛かり、二人の無実の証人になるべき国行は死骸で運び込まれる。 葛城民部は姫を園部家に、左衛門を幸崎家に預け軟禁させる。
■新薄雪物語( 夜の部 : 広間、合腹、正宗内 )
【 広間、合腹 あらすじ 】 しかしお預けは一時的な民部の情実で、このままいけば死罪はまぬがれがたい。そこで姫を預かった園部家では、「 兵衛( 仁左衛門 )」と梅の方の夫婦が妻平籠をつけて姫を落としてやる。 そこへ首桶を持って「 幸崎伊賀守( 幸四郎 )」が訪ねて来る。 左衛門の首を討ったから、その首を持って出仕しようというのである。 兵衛も首桶を持って出る。 しかし二つの首桶の中に首はない。 伊賀守も左衛門を逃がした。 二人の父親は子供の幸せを願って陰腹( 人知れず切腹し、隠していること )を切ったのである。
【 正宗内 あらすじ 】 刀鍛冶「 正宗( 歌六 )」の家に鍛冶修行のため吉助という名で住み込む「 来国俊( 橋之助 )」は、正宗の「 娘おれん( 芝雀 )」と恋仲である。 正宗は吉助が実は来国行の息子国俊と知り、風呂の湯かげんに事寄せて、刀鍛冶の秘法の湯の温度を教え、昔自分が国俊の父国行に世話になった恩返しであると語る。 一方正宗の息子「 団九郎( 吉右衛門 )」は、正宗、国俊と共に刀を打ち、そのすきに秘法の湯かげんを盗もうとするので、父正宗に湯へ入れた片腕を斬られる。 左衛門・薄雪姫、ひいては園部幸崎両家を陥れた調伏の「 やすり目 」のことを、父に責められて、団九郎は改心、全てを白状する。 渋川藤馬が 左衛門 ・薄雪姫 達を追ってくるので、団九郎は、藤馬たちを相手に片腕で戦い、追い散らす。
【みどころ】 完全に上演すれば一場でおよそ二時間かかる大作で、浄瑠璃の原作を歌舞伎独特の工夫で、美しく、はなやかにデフォルメした。 左衛門、妻平、国行という男( 善人 )ばかりの一行。 薄雪姫、擁、腰元達と言う女ばかりの一行。 大膳、藤馬、団九郎という悪人たちの一行。 これを縦の関係とすれば、横の関係は、左衛門薄曙姫と大膳、妻平擁と藤馬という全く同じ三角関係。 登場しないが正宗と団九郎、国行と国俊という父子の関係が、この構図の下で展開される。
肝腎な証人の国行が死んで一同がうろたえるところ、兵衛と伊賀守が子供達の処理について花道へ行って相談するところ、民部が姫と左衛門を呼んで扇の下で手を握らせて両家へ預けるところが、豊潤でゆったりした歌舞伎の時代物らしい感覚をもっている。 この場で叛逆罪に問われた両家一族の絶望感が出ると、つぎの園部館の「 合腹 」の悲劇がより一層はっきりする。 叛逆罪は弁明ままならない。 死と滅亡の予感。 その中で二人の父親が子供を逃がす。「 合腹 」というのは、二人の腹を切る計画がぴたりと合ったからで、「 三人笑 」と言うのは、腹を切った二人に梅の方を加えて、今生の想い出に、三人が笑うという趣向からきている。 人生の果ての笑いという考え方もあるが、到底打開できぬ現状を笑いとばすという意味もあるのだろう。 そして最後、時代物が、一転して世話物になる。 前半はおれんと吉助のラブシーンと正宗が吉助に湯かげんを教えて昔語りになるところが見せ場である。 正宗がいい役者だと、死んだ国行と正宗の関係、人生における二人の出逢いの重さ、それに対する心情がよく出る。 二人の仲は単なる恩義以上のものである。 正宗、吉助、団九郎の三人が刀を打つ「 刀鍛冶の鳥帽子、素襖 」という正装の風俗が見ものである。 団九郎は、鬘と鳶八丈という安っぽい敵やく役の扮装で、この男の悪党らしい風格がひと目でわかるようになっている。 後半は、その悪人が腕を斬られて改心するところが、全編の見せ場である。
■夕顔棚
老夫婦( 菊五郎 ・ 左團次 )の情愛があふれる舞踊です。 とある田舎の百姓家。旧盆の夕方、軒端の棚には夕顔が花を咲かせています。風呂上がりの爺は夕涼みをしながら酒を飲んでいました。婆も風呂から上がって出てくると二人は酒を酌み交わします。 酒が進むうちに、遠くから聞こえてくるのは盆踊りの声。昔を思い出した二人は仲良く踊り始めます。
昼の部では 和服のお姉さん達が目の前に座り 華やかでした。新薄雪物語の夜の部では、初めてですが「 説明のパンフレット 」が配られていました。 この演目 昼の部 を観ていない人には 少し 内容が難解かも。
携帯で撮った「 歌舞伎座 」の中を「 YOU TUBE 」にアップしてみました。 携帯の動画ですので画像は良くは有りません。
「 幸四郎のコメント 」をリンクしておきました。
■天保遊侠禄(てんぽうゆうきょうろく)
幕末前夜の江戸の世相を描いた作品です。 江戸の天保年間。旗本の勝小吉( 橋之助 )は、若い頃からの放蕩生活のため、今も無役の身です。 今日は秀才と評判の高い息子の麟太郎のため、御役につこうと向島の料理茶屋で上役の大久保上野介を招いての宴席の準備をしています。 そこへ芸者の八重次( 芝雀 )が現れますが、座敷に出るのを嫌がります。 実は以前、小吉と八重次は深い仲でしたが、駆け落ちの末、捨てられた八重次は恨みを持っていたのです 。息子のためにと懇願され、八重次は大久保をはじめ横柄な役人たちをもてなします。
■新薄雪物語( 昼の部 : 花見、詮議 )
【花見 あらすじ 】 京の春、花の名所清水寺の境内。 六波羅探題の命によって、園部兵衛の一子「 左衛門( 錦之助 )」は、刀鍛冶「 来国行( 家橘 )」に打たせた刀を清水寺へ奉納に来る。 幸崎伊賀守の息女薄雪姫( 梅枝 )も腰元「 雛( 時 蔵 )を連れて清水へ参詣。 左衛門の「 奴妻平( 菊五郎 )は、雛と恋仲。 二人の取り持ちで、薄雪姫と左衛門は互いに胸の想いを打ちあける。 二人の艶書は、「 秋月大膳( 仁左衛門 )」の家来「 渋川藤馬( 松之助 )」の手に入る。 大膳は六波羅の天下をねらう陰謀家で、薄雪姫に横恋慕、藤馬もまた雛に横恋慕している。 一方「 来国行( 家橘 )」は偶然清水寺で、女のために勘当した息子「 来国俊( 橋之助 )」に会う。 国行と奉納の刀影の太刀をつくる役目で争って破れた「 団九郎( 吉右衛門 )」は、太刀に「 国家調伏 」の「 やすり目 」を入れたところを、国行に発見される。 あわや悪事路程というところを来かかった大膳が国行を殺し、団九郎を救う。 調伏の「 やすり目 」を入れさせたのは大膳で、六波羅の重臣園部兵衛、幸崎伊賀守を謀叛の罪に落とす陰謀であった。
【 詮議 あらすじ 】 「 天下調伏 」は今で言う国家に対すべする叛逆罪であるから、逃れる術はない。 奉納の太刀に調伏の「 やすり目 」が発見されたから「 幸崎館 」へ、執権「 葛城民部( 菊五郎 )」は「 秋月大学( 彦三郎 )」、「 幸崎伊賀守( 幸四郎 )」、「 園部兵衛( 仁左衛門 )」が集まって詮議が始まる。 そこで「 薄雪姫( 児太郎 )」と左衛門に嫌疑が掛かり、二人の無実の証人になるべき国行は死骸で運び込まれる。 葛城民部は姫を園部家に、左衛門を幸崎家に預け軟禁させる。
■新薄雪物語( 夜の部 : 広間、合腹、正宗内 )
【 広間、合腹 あらすじ 】 しかしお預けは一時的な民部の情実で、このままいけば死罪はまぬがれがたい。そこで姫を預かった園部家では、「 兵衛( 仁左衛門 )」と梅の方の夫婦が妻平籠をつけて姫を落としてやる。 そこへ首桶を持って「 幸崎伊賀守( 幸四郎 )」が訪ねて来る。 左衛門の首を討ったから、その首を持って出仕しようというのである。 兵衛も首桶を持って出る。 しかし二つの首桶の中に首はない。 伊賀守も左衛門を逃がした。 二人の父親は子供の幸せを願って陰腹( 人知れず切腹し、隠していること )を切ったのである。
【 正宗内 あらすじ 】 刀鍛冶「 正宗( 歌六 )」の家に鍛冶修行のため吉助という名で住み込む「 来国俊( 橋之助 )」は、正宗の「 娘おれん( 芝雀 )」と恋仲である。 正宗は吉助が実は来国行の息子国俊と知り、風呂の湯かげんに事寄せて、刀鍛冶の秘法の湯の温度を教え、昔自分が国俊の父国行に世話になった恩返しであると語る。 一方正宗の息子「 団九郎( 吉右衛門 )」は、正宗、国俊と共に刀を打ち、そのすきに秘法の湯かげんを盗もうとするので、父正宗に湯へ入れた片腕を斬られる。 左衛門・薄雪姫、ひいては園部幸崎両家を陥れた調伏の「 やすり目 」のことを、父に責められて、団九郎は改心、全てを白状する。 渋川藤馬が 左衛門 ・薄雪姫 達を追ってくるので、団九郎は、藤馬たちを相手に片腕で戦い、追い散らす。
【みどころ】 完全に上演すれば一場でおよそ二時間かかる大作で、浄瑠璃の原作を歌舞伎独特の工夫で、美しく、はなやかにデフォルメした。 左衛門、妻平、国行という男( 善人 )ばかりの一行。 薄雪姫、擁、腰元達と言う女ばかりの一行。 大膳、藤馬、団九郎という悪人たちの一行。 これを縦の関係とすれば、横の関係は、左衛門薄曙姫と大膳、妻平擁と藤馬という全く同じ三角関係。 登場しないが正宗と団九郎、国行と国俊という父子の関係が、この構図の下で展開される。
肝腎な証人の国行が死んで一同がうろたえるところ、兵衛と伊賀守が子供達の処理について花道へ行って相談するところ、民部が姫と左衛門を呼んで扇の下で手を握らせて両家へ預けるところが、豊潤でゆったりした歌舞伎の時代物らしい感覚をもっている。 この場で叛逆罪に問われた両家一族の絶望感が出ると、つぎの園部館の「 合腹 」の悲劇がより一層はっきりする。 叛逆罪は弁明ままならない。 死と滅亡の予感。 その中で二人の父親が子供を逃がす。「 合腹 」というのは、二人の腹を切る計画がぴたりと合ったからで、「 三人笑 」と言うのは、腹を切った二人に梅の方を加えて、今生の想い出に、三人が笑うという趣向からきている。 人生の果ての笑いという考え方もあるが、到底打開できぬ現状を笑いとばすという意味もあるのだろう。 そして最後、時代物が、一転して世話物になる。 前半はおれんと吉助のラブシーンと正宗が吉助に湯かげんを教えて昔語りになるところが見せ場である。 正宗がいい役者だと、死んだ国行と正宗の関係、人生における二人の出逢いの重さ、それに対する心情がよく出る。 二人の仲は単なる恩義以上のものである。 正宗、吉助、団九郎の三人が刀を打つ「 刀鍛冶の鳥帽子、素襖 」という正装の風俗が見ものである。 団九郎は、鬘と鳶八丈という安っぽい敵やく役の扮装で、この男の悪党らしい風格がひと目でわかるようになっている。 後半は、その悪人が腕を斬られて改心するところが、全編の見せ場である。
■夕顔棚
老夫婦( 菊五郎 ・ 左團次 )の情愛があふれる舞踊です。 とある田舎の百姓家。旧盆の夕方、軒端の棚には夕顔が花を咲かせています。風呂上がりの爺は夕涼みをしながら酒を飲んでいました。婆も風呂から上がって出てくると二人は酒を酌み交わします。 酒が進むうちに、遠くから聞こえてくるのは盆踊りの声。昔を思い出した二人は仲良く踊り始めます。
昼の部では 和服のお姉さん達が目の前に座り 華やかでした。新薄雪物語の夜の部では、初めてですが「 説明のパンフレット 」が配られていました。 この演目 昼の部 を観ていない人には 少し 内容が難解かも。
携帯で撮った「 歌舞伎座 」の中を「 YOU TUBE 」にアップしてみました。 携帯の動画ですので画像は良くは有りません。
「 幸四郎のコメント 」をリンクしておきました。
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